秘密の居残りから、一週間たった。体育祭日和の土曜日。

「優花、玲好!早くして!遅刻するじゃん!」

叶君が、私達の鞄を荒々しく持って玄関先で怒鳴る。

「ちょっ、待って!ハチマキが!髪の毛と絡まったの!」

「俺のハチマキどっか行っちゃった!どうしよ!」

「ちょっと!優花が、付けてるハチマキ玲好の!優花のは、玄関の下駄箱の上にあるから!」

「「えぇぇえぇぇ?!?!」」

「はぁ……。相変わらず、騒がしいね……。優花ちゃん、コッチおいで。ハチマキから、髪の毛解いてあげるから」

愛希さんが、苦笑いしながら私に手招きをする。私は、愛希さんの元へ行く。

愛希さんの、細くて長い指が私の髪の毛を優しく触れる。私は、少しドキっとする。

「もう、本当に大変だよ。僕…」

叶君が、呆れと疲れの混じった声で呟いた。

「コラコラ、そんな事言っちゃダメでしょ。楽しいじゃん。騒がしくてさ」

はい、出来たよ。と、愛希さんが、ハチマキを私に手渡しする。

「ありがとうございます!愛希さん!」

「うん。玲愛や叶に心配を掛けないように、気を付けてね。優花ちゃん、玲好」

「「はーい!」」

私達は、ルームシェアから急いで飛び出る。足の速い玲好君は。私達と、距離をグングン離していく。

「玲、好君…、足…速っ」

「アイツ、足だけ速い…」

「もっと、頭の回転を速くして欲しいよ…」

叶君と、玲愛君が玲好君の背中を見つめながら、愚痴を零し。学校まで走っていった。

「はぁ…、はぁ……、……。やっと、着い、た…。ギリギリセーフ…」

現在時刻。8時27分。私達は(玲好君を除いて)、学校の玄関で呼吸を整える。

「はぁ…、はぁ…。何で、あんなに速く走ってたのに…。アイツは、呼吸が乱れてないんだよ……。同じ双子として、ちょっと怖い……」

「でも、はぁ……。玲好は玲愛と違って頭の回転は速くないけどね……」

叶君が、ジャージのTシャツで汗を拭いた。少し覗いた叶君の白い肌に心臓が少し飛び跳ねた。

「ちょっと!人の悪口を、堂々と玄関先で言わないでよ!」

玲好君が、プンプンと効果音を付けながら。私達の方へと歩いてきた。

「悪口じゃなくて、本当の事だから…」

「ぶー。酷いなー!本当に!」

「もう、どうでも良いから早く教室行くよ」

玲愛君が、靴を履き替えて私達の頭をハチマキで軽く叩いた。

「「はーい!」」

「うん」

私達は、軽く手を振って自分達の教室に入った。

その後、無駄に熱い先生のHRを聞いてから。クラスで纏まってグランドに向かった。