この一週間。
美紗は会社を休みがちだった。

月曜の朝、危惧した通り通勤途中で気分が悪くなり、通勤ラッシュで混雑する駅のホームで座り込んでしまった。


大丈夫ですか、と見知らぬ中年男性が声を掛けてくれて、駅長室でしばらく休み、そのまま帰宅した。


次の日は、満員電車を避け、遅刻して出勤したが、CADに向かうのが苦痛で仕方なかった。

集中すると、吐き気がする。

とにかく疲れてしまう。
仕事にならなかった。

昼休みも吐くことを恐れて何も食べず、机に突っ伏して気分の悪さと戦い、ただ時間が過ぎていくことを願った。


水木金と会社を休んだ。



[美紗、風邪?大丈夫?医者に行ける?]


心配する誠からのメールにも、
[大丈夫、休んでいれば治る]と短い返信をするのがやっとだった。

携帯のディスプレイやテレビを見ていると、気分が悪くなる。


家のリビングのソファに横になり、何もせずひたすら安静にしていた。


このところの食欲不振で一気に三キロも体重が減った。



妊娠検査薬は、陽性だった。


美紗の中の何かが、人工的で冷たく硬いものを拒絶し、自然で温かく柔らかいものを求めていた。


ヒカルだけには、そのことを告げた。