頬に頭の重みが全部伸し掛かって、痛い。

 瞼に、大粒の雨が当たって、痛い。

 指はもう力が入らない。

 足もミュールが脱げているけど、もう履く気にもなれない。

 激しい雨に打たれて、コンクリートの階段の上で寝そべっていればそのうち死ねると思っていたのに、いくら経っても、変わらずそのまま。

 このまま、意識を失くして、死ねたらいいのに……。


 父はサラリーマン、母はパート。よくある家庭で20年間1人娘として育った私は、ずっと親元を離れずに甘えながら生活をしてきた。

 そして今年地元短大を卒業して、なんとか一人前になったのを機に、初給料3か月分を貯めて、両親に旅行を送ったのだった。

 細々と生きてきた私にそんなことを自慢できるような友達もおらず、ただ自己満足に浸り、密かに土産を待ったのはほんの3日。

 帰りの飛行機は不時着し、両親は還らぬ人となった。

深い付き合いをしていた親戚もおらず、突然孤独になった私は家から出る気にならず仕事を辞めた。

更に保険金や見舞い金が貯まり、生活の心配はなかったせいもあり、家を売った。

思い出深い家にはとても、住む気にはなれなかった。

 家財道具一式は全てリサイクル業者に預け、位牌だけバックに詰めてホテルに缶詰めになる。

 お金目当てか、手を差し伸べてくれる人もいたけれど、うまく接することができずに、次第に周りから人が消えた。 

 何度も剃刀を手首に持って行ったけど、痛そうで怖くて、何もできずに泣いた。

 そんな生活、このまま続けていても仕方がない。
 
 こんな生活、誰もいない生活、続けていても意味がない。