俺は“彼女からの依頼”で桑月一を殺しに廃墟ビル4階へ向かう。

廃墟ビルの入り口に立ち、殺人現場である4階を見上げた。

「桑月は来てるか?」

藤山真綾(フジヤマ マアヤ)に問い掛ける。

『えぇ』

真綾は短く答えた。

「じゃぁ行くか」

ネックウォーマーに鼻までうずめ、ゴム手袋を二重にした両手をズボンのポケットに入れた。

桑月に俺の足音が聞こえる様に一段一段上がって行く。

最近、警察が入ったから砂埃が溜まった床や階段には無数の足跡が残っていた。