「ただいま」


その声と共に、あたしは自分の家に冷たさを感じた


ひんやりとした空気はあたしの心の中と同じだった。


「ずっと、こんなんなのか」


あたしが抱く千夏を見て、守が問いただした。


「そう、寝てる以外はほとんど」


「ごめんな……千夏……」



そう言いながら、あたしから千夏を抱き上げた


“えっ…………!!!”


「千夏っ……」


守に抱かれた瞬間に、千夏はピタリと泣きやんだ。



「ごめんな……」


守が揺すりながら、千夏を抱き、何度も何度も謝っていた。


あたしはそんな守と千夏の姿に心を打たれた。



“千夏が……守を求めた……”



あたしは、ただ力が抜け、その場に座り込んだ。





千夏が求めていた物は――

守だったんだ……。


“こんなに小さい千夏が求めているものを、あたしはまた奪おうとしていたんだ”



そう思うと一気に力が抜けた――。



「さみちかったんだよ、ちなつも!!」




「あい……」
「愛っ……」




愛のその一言で、あたしと守は本当に何日かぶりに目を合わした。


その声はきっと愛の本当の心の声だったのかもしれない。


「よかったね、パパにあえて……!!」



小さい愛が守に寄り添い、千夏の頭を撫でてる姿にあたしは絶えられなくなり、トイレに駆け込んだ。




込み上げる涙を声を押し殺して泣いた。




愛の千夏を思う気持ちと、自分の中での不安――


千夏の求めていた物―――。



別れたって、2人を必ず幸せにしてみせる!!



そう、考えた結果の別れのあたしの中の選択。



でも―――


愛と千夏の幸せは……



ここにあったんだ……。



そう思いながら、
自分の辛さだけで、守から逃げようとした自分が情けなくなって



溢れてくる涙を何度も何度も拭った