「ママ~?だいじょうぶ~?」


愛があたしの手にティッシュをのせ、出てくる血を一生懸命拭いていた


「ありがとうね、愛」




不安そうに手を見つめる愛を抱きしめた



「ごめんね……」



その言葉が自然に出てきていた




なんの謝罪なのか、自分でも分からなくて



この、家の空間の中に居るバラバラの夫婦



愛のない生活……





そんな物、全てに巻き込んでしまった謝罪の言葉だったのかもしれない。




違う―――




“こんな母親でごめんね”




その方がふさわしかった




泣き止まない千夏の傍に駆け寄りあたしの腕の中に抱き上げた




「不安だよね、泣きたくだってなるよね……)






ソファーの上で目を閉じ動かない守に目をやりながら深いため息をついた





“このままじゃ、本当に不幸にする”





純粋で、綺麗で輝きを持ってる小さな2人の瞳……



2人の顔を交互に見ながら、あたしは片手で千夏を抱きボストンバッグに荷物をまとめた






鳴り止まない守の携帯はいつしかマナーモードに切り替えられていた



その、バイブ音と千夏の鳴き声だけが




静かな部屋に響き渡っていた