「あっ、お兄ち…」

「「「せっ、先輩」」…だね?」

皆さんが、声を揃えてお兄ちゃんの方を見る。

「おぉ、七原達じゃねぇか。…………で?お前達、俺の女に何手出してんの?」

お兄ちゃんが、皆さんの事を睨み付けた。

「皆さん、気にしないで下さい。私のお兄ちゃんは、こういう人ですから。絶対に有り得ませんから」

「何を言ってるんだ!!昔、俺達は愛を誓ったじゃないか!!忘れたのか?俺は……。俺は悲しいぞ!優!!!」

お兄ちゃんは、肩を掴んで私の体を激しく揺さぶる。

「ちょっ…お兄ちゃ…」

「先輩、ヤメた方が良い…かな?」

「どうなんだ!優!本当に忘れたのか?!あの愛は、偽りだったのか?!優は、俺が嫌いなのか?!俺は…こんなに好きなんだぞーーー!!!」

「あーも!はい、はい。好きだから、好きだから!!」

「……本当か?じゃあ、結婚式はいつ挙げようか?」

「勘違いしないで。…私の好きは、お兄ちゃんとして好きって事だから。…それでは、皆さん。今日は楽しかったです。御馳走様でした。また今度、コンビニで…。さよなら」

私は、皆さんに軽くお礼と挨拶をした。

「おぉ!じゃあな!また明日!」

「また明日ね!」

「また明日会おう…ね?」

だけど、やっぱりお兄ちゃんは、突っかかってくる。

「お前達、俺の優に手出したら殺すからな!!」

「先輩…。流石にそれは…」

「そうですよ!先輩!」

「それは、ちょっと無理…かな?」

「なんだ!先輩の言う事が、聞けないのか?!優は、俺の女なんだよ!」

「お兄ちゃんの女に、なった覚えはありません。それに、妹にバカな事を言わないで下さい」

「だけど、俺達は血が繋がってないんだ!それに、俺達はもう兄弟じゃないんだぞ!」

「そうだけどさ…」

「えっ?先輩、どういう事ですか?」

「俺達は、元から血は繋がって無いけど。両親が再婚して、兄弟になったんだ。…それで、俺達が何故兄弟じゃなく他人なれたかというと、…」

「お母さんとお父さんが、もし自分達が死んだら兄弟から他人になっても良いように、離婚届けも一緒に書いたんです。それで、両親が死んで、私達2人は離婚届けを市役所に出したんです」

「何で、そうする理由があるの…かな?」

「俺が、優の事好きだって両親に言ったんだよ。…で、両親が悩んだ末、俺達が兄弟の間は優に手出したら禁止。…その代わり、兄弟から他人になった時は、優と気持ちが通じあった場合、手出しても良いって事になったんだ」

「まぁ、気持ちは通じあって無いけどね」

「なぬっ!?気持ちは通じあっているじゃないか!!昨日だって、一緒に寝たじゃないか!!」

「お兄ちゃんが、勝手に私の布団に入ってきたってダケじゃん…」

「おっ、俺は寒かっただけだ!決して、下心丸出しで優の布団に入った訳じゃないぞ!」

「後者が、本音だよね?お兄ちゃん?」

「ちっ、違っ…」

私が、黒笑顔でお兄ちゃんの事をジィッと睨み付ける。すると、お兄ちゃんは…。

「スイマセンですた!」

「先輩、優の黒オーラにビビって、スイマセンでしたも言えてない…」

「じゃあ、もう言いたい事は無いよね?」

「あい……」

「と、いう事で、皆さん。今度こそ、さよなら。また今度お会いしましょうね」

「また明日!」

「じゃあな!また明日な!」

「また明日…ね?」

やっぱり、明日も来るつもりなんだ…。
私は、軽くお辞儀をして、お兄ちゃんの車に乗り込んだ。

「本当に、アイツらは俺の女に手出してんだ!」

「はい、はい。そうですね、そうですね」

「優も、ちゃんと話聞けい!」

「眠い…。家着いたら教えて。お休み…」

「あぁ。ファーストキスが、無くなっても良いんだったら寝ても良いぞ!」

「じゃあ、やっぱり寝ない」

私は、睡魔に負けそうになりながらも、ずっと起きて自分のファーストキスを守ってた。

それから、何回もお兄ちゃんにお風呂を覗かれそうになったけど、頑張ってお風呂に入って、私は自分の部屋で鍵を閉めて寝た。その理由は、勿論。
お兄ちゃんに、潜入されない為にね。昨日は、ついつい忘れちゃってた…。気を付けないと……。