「あっ!優ーーー!迎えに来てやったぞーーー!」

コンビニの前に出て来た私の所まで走って、思いっ切り抱き締めるお兄ちゃん。

「離れて」

皆さんに、見られてるのが嫌だ…。

「何だと?!優は、俺と何時間も離れてたのに、寂しくなかったのか?!」

「全く。全然」

「うっ…。うぅぅ……。あの愛妻弁当は……、幻だったのか……?」

「お兄ちゃんの、妻になった記憶が、ありませんから」

「何だと?!記憶喪失か!?」

「ただの。お兄ちゃんの、思い込みです」

「そっ、そんな筈は無い!俺は…俺は…!!」

「…皆さん、助けて下さい」

「あっ、今行く…ね?」

「だけど、先輩だよ?…一歩間違ったら、優さんとデートに行けなっ…。あっ…」

リンさんが、慌てて自分の口を手で塞いだ。

「デート…だと?!優と一緒にか?!ふざけるな!誰が、許すとでも思ったんだ!」

「私」

「…………」

「後、私のデート。お兄ちゃんに、関係無い事だから」

「…………」

お兄ちゃんの、瞳には涙が溜まっていく。

「ゆっ、優さん。言い過ぎだよ?」

「先輩が、泣きそうじゃないか?!」

「本当だ…ね?」

「じゃあ、皆さんは私とデートしたくないんですか?…なら、私はお兄ちゃんの方に、味方しますけど…?」

「先輩!元気出して下さい!」

「優は、先輩の事を好きだと思います」

「と、いうか僕達より大切にしてもらってます…よ?」

「おっ、お前らぁ……」

お兄ちゃんは、偽りの優しさだと、知らずに皆さんの言葉に騙されてた。流石、バカで変人な、お兄ちゃん…。

「だから、優さんとデート行かせ…」

「それは、勿論ダメだ」

「即答って…」

「当たり前だ!俺は、優が小さい頃から好きなんだぞ!愛してんだぞ!」

「…………」

コンビニの前で、大声でバカな事は、言ってほしくない。…まぁ、バカで変人な、お兄ちゃんに何言っても無駄だろうけど…。

「でも、恋愛に時間は関係無いと思い…ます?」

「リイの言ってる事に、同感です」

「俺も、関係無いと思います」

「うっるっさっいっ!俺の女なんだよ!」

「お兄ちゃんの女になった、覚えは全くありません」

「…………」

「あっ……。もう、7時過ぎてるぞ……」

アラタさんが、腕時計を見て呟く。

「もう、そんな時間か…。お兄ちゃん、帰ろう?」

「おぉ……」

「…………?」

本当に、ヘコんでるの……?えっ?何で……?落ち込む理由が、分からない……。

「お兄ちゃーん?どうしたの…?」

「何でもない…。じゃあ、七原達。また明日、会社でな…」

「「「はい。お疲れ様でした」」…ね?」

私は、皆さんに軽くお辞儀をしてお兄ちゃんの後に続いて車に乗ろうとしたら…。

「あっ、優さん…。寝顔可愛かったです。俺の携帯の待ち受けにしておきました」

「あっ、僕もだ」

「勿論、僕も…だよ?」

「なっ、なななな………!!!!」

私の顔から、火が出そうな位に顔が赤くなり恥ずかしくなった。

「バイバイ。優さん」

「じゃあな。また明日」

「また明日会おう…ね?」

「…………」

私は、車に乗ってから窓を開けて文句を言おうとしたら……。車が発進してしまって文句が言えなかった……。今日も、そんなに変わった事は、無かった。

強いて言うなら、お兄ちゃんの様子が、ちょっと可笑しかった事と、レンから変なメールを貰った事だ。

『あぶいたなかいたしとなとい?』

何を伝えようとしたのか、不思議だった。