「いらっしゃいませ」

営業スマイルというものは、バイトをしていくうちに、身に付いた。まぁ、役に立つって言えば、役に立つかな?

ウィーンと自動ドアが開く。リンさん達3人が一気に来た。

「よぉ!優!来てやったぞ!」

「こんにちは。優さん」

「昨日久り…だね?」

「いらっしゃいませ」

私は、それだけを言うと目の前のお客様の合計金額を言ってお金を貰いお釣りを払った。

「ありがとうございました。またのご来店お待ちしております」

私は、腰を曲げてお辞儀をしてお客様がコンビニから出て行くのをただ待つ。

「……………」

「で?もう、無視しないのか?」

「はい。もう、皆さん以外のお客様がいないので」

「そっか。…俺達まだ、お客様か…」

「それ以外何があると?」

「高望みはまだしないけど、知り合い…。いや、友達とか?」

「どっちですか?」

「じゃあ、友達で!」

「分かりました。では、友達で」

「うん。やった!」

ニコニコと、リンさんは優しく笑った。

「で、何を買いに来たんですか?コンビニに、来たんですから何か買いに来たんですよね?」

「ん?優を買いに来た。…やっぱり、ダメ?」

「当たり前です。私は、物じゃないんですから」

「僕は、優を貰いに来た!」

「無理です」

「僕は、優ちゃんを譲ってもらいに来た…よ?」

「ごめんなさい。無理です」

「どうしたら、買っても良いのかな?」

「その前に、私は、物じゃないんですから。買うのは、無理です」

「じゃあ……」

「「「奪いに来た」」…よ?」

「…………っ?!」

なっ、何を?私を?私の何をどうやって、奪うの……?!

「これなら、物でも物じゃなくても。通用するよね…?優さん」

「それに、“奪う”って事は許可を必要としない。優がいくら無理と言っても、“奪う”んだから…(以下略」

「だから、優ちゃんの身も心も奪いに来た…よ?」

「かっ、勝手にしてれば良いじゃないですか……!!」

私は、パニックになってレジのボタンを何回も何回も押しまくった。

「ちょっ、優さん?…こっ、壊れちゃうよ?れっ、レジが…」

「もう、本当に…。からかうのは…。だから…。その…。えっと…」

「おい、優。落ち着け」

「私は、恋なんて…。好きって気持ちは分からないから…です。だから、その…。初恋もまだだし…。そんな…」

何でだろ?…昨日だって、今日と同じような事言われてたのに…。…何故か今日は、変な感じが…。

「ふっ、……優ちゃん面白い…ね?」

「顔真っ赤。今頃意味分かったのかな?」

「遅過ぎじゃないか?」

「ばっ、バカにすると……。おっ、お兄ちゃんに、チクりますよ」

「「「……………」」」

やっと皆さんが黙った。お兄ちゃん……。一体皆さんに何をしているんだろ?

「後、私のバイト時間終わるんで買うなら早く買って下さい……」

「んー。優さんの事は、今度奪うからなー……。何にしようかな……」

「僕は、やっぱりチョコ…かな?」

「僕は、コーヒーでお願いする。勿論、ブラックでな」

「コーヒーブラック100円です」

「おぉ…。ほい。百万円」

そう言ったアラタさんは、私の手に100円を置いた。

「100円、丁度のお預かりします。ありがとうござ…。ちょっ……?!」

アラタさんは、私の手を握り締めてきた。私は、振り払おうとするけどアラタさんは大人だ。力の差には限界がある。