そろそろ草太が迎えに来る時間だと思い、ベッドに腰かけていた体をあげた。


スクールバックを肩にかけ、スタンドミラーで全身を映す。


グレーのスカートはウエストで一回曲げて膝上に。


ブラウスはウエストから少し出してラフに着て、最後に黒の靴下をキュっとふくらはぎまで上げる。


その時ふと、ベッド下に置いてあるトランペットのケースが目に入った。


黒のケースには、少し埃がかぶっている。


もう……1年半くらい、か。


ケースのフタを開けずに、ずっとベッドの下で眠っているトランペット。


『希歩の夢ってなに?』


中学の頃友達に聞かれた言葉が頭に浮かぶ。


『夢? なんだろう。別にないかな』


あたしは肩をすくめて笑ないがら答えたんだっけ。


別にないと言いながら、心で密かに抱いていた夢。


『ずっと、トランペットを吹き続けたい』


トランペットを吹くとストレスが一気に吹き飛んだし、吹き終わった後唇に残る痺れが心地よくもあった。