「ねぇねぇ、似合う~?」


雫が、紺地に色鮮やかな朝顔が描かれた浴衣の袂を持ち、


くるくると回って見せる。


こんな彼女を見たのは初めてで、


言葉に詰まっていると、


横から叔母さんが口を挟み、


「と~ってもかわいい。ねぇ、ヒロ君」


と、話を振る。


 今日は、近くの神社で秋祭りがある。


僕と雫は、一緒に出かける約束をしていた。


「あたしも行きたいけど、今日は旦那の帰りが遅いみたいだからなぁ。


気を付けて行ってらっしゃい。」


そう言って叔母さんが、寂しそうに見送ってくれた。




 神社へと続く参道には、人が溢れかえっていた。


人々の雑踏と一緒に間延びしたカラオケが聞こえてくる。


町内会のカラオケ大会が、特設されたステージで行われているようだ。


僕は小さな頃に、まだ生きていた祖母に連れられて来たことがあるのを思い出した。


 
 人ごみに当てられてか、


雫の小さな手が僕のTシャツの裾をぎゅっと掴む。


その手を、ゆっくりと手繰り寄せしっかりと握った。