何かを得て、失うことが怖かった。

その喪失感を、私は知っているから。

誰かが私と触れ合い、馴染み、私がいることが当たり前になる前に。

私はまた、自分を殺すの。





「部活だりー」

「お前サボってばっかじゃん」



教室の真ん中から、名良橋君と高野君の会話が聞こえてくる。

あれから2日が経ち、週が明けても名良橋君が私に関わってくることはなかった。

どうやらあの言葉、効いたみたい。



「先輩に、親戚が危篤って言っといてよ」

「ふざけんな、行くぞ」



名良橋君が高野君の奥襟を掴み、教室を出て行く。

そんな様子を見ていると、ふと目が合った気がしたけど……気のせいだよね?