「綺麗な花だな…。よし、ここでひとまず、休憩するか」


辺りを見渡し、大きな銀杏の樹を見つけ、樹によってできた日影に腰を下ろした。


「ふぅ、天気もいいなぁ。よし、タルト食べるか」


バスケットから、自分用の既にカット済みのタルトを取りだし、一口目をかじる。


「うっめぇー!やっぱ、母さんの菓子は絶品だな」


母の作る菓子が大好物な赤は、満足気にタルトを頬張った。


心地よい風が吹き、草花たちは靡き、虫たちは花の甘美な臭いに誘われて蜜を吸ったり、自由気ままに宙を待っている。


「野いちごのタルトか…。血糖値が高い私からしたら、禁断の食べ物……。くそぉ、羨ましいぞ人間!」


この場には相応しくない動物が、数メートル先の樹の後ろに隠れ、羨ましそうに赤を見つめていた。


だらだらとヨダレを垂らしては拭い、垂らしては拭いを繰り返しながら最後の一口を食べ終える赤と、タルトが口に消える最後の一瞬を交互に見ては喉を鳴らした。


「まぁ、いい。どのみち、私の腹のなかに入るんだから、一緒か。甘いものは控えるようにとは言われたけど、肉を食うなとは言われてないもんね♪」