春休みが終わりを告げる四月。


私が幼少の折から通い続ける一族が理事長を務める
ここ神前悧羅学院昂燿【こうさきりらがくいん こうよう】校にも
晴れて新入生を迎える季節が訪れた。


幼等部の頃から、この閉鎖され続けた学院で生活を続ける私にとって
この学校生活が窮屈でたまらなく嫌だった。


それでも通い続けるのは世情と対面。
そして……何時かの革命を夢見るために。



四月三日。
綾音の邸の郵便ポストに一通の封筒が届いた。

表下記に記されたのは私自身の名前。
封書の裏には神前悧羅学院生徒総会の刻印。

その手紙の封をペーパーナイフで切ると、
中からは予想通りのものが姿を見せる。


菫色の紙に昂耀校のシンボルであり校章でもある
星の浮き彫りが施された一枚の小さなカード。



*

綾音紫


今年度の神前悧羅学院学院最高総合代表に任ずる。



学院理事会


*


そのカードを封筒の中に片付けて、
同時に溜息をつく。



何時かはその時が来ると思っていた。


だけどその時は、まだ数年後で
私にはこんなにも早く、その時が訪れるとは思いもしなかった。


だけどそれは……同時に私自身の
彼岸成就にも似た革命の始まりを告げるゴング。



私、綾音紫【あやね ゆかり】が通い、我が一族が経営を任されている
この神前悧羅学院には生徒会と言うシステムが存在しない。

生徒の代表は「生徒総会役員」と呼ばれて、当学院の代表生徒となる。


その代表生徒を決めるのは、生徒自身ではなく
理事会と呼ばれる学院の経営陣の面々。

学業の成績・学院生活においての生活態度などが評価基準となり、
綾音一族が独自に調査し、理事会に持ちあげて話し合いの結果、春休みに任命する。


無論、教師も『生徒総会役員』を推薦することは出来ず、
『生徒総会役員』の任命にあたって意見が述べられるのは
理事会の他は当の『生徒総会役員の頂点』のみ。



そして春に私のようにこうしてカードを送られた生徒は、
今年、一年間の就任が義務付けられる。