「ロンッ・・・」

私の声が静まりかえっていた部屋に響き渡った。


「・・・・うそだろ、ちょっちょっと待ってくれ!うわぁああ・・・」


私がアガったのと同時に、向かい側に座っていた相手は隣の部屋に連れていかれた。



「や・・・やめてくれ!うわああ、グエッ・・・うっ・・・」

隣の部屋からは悲惨な音が聞こえてくる。



「皐、全部は渡せねえから・・・小遣い代わりな?」

パサッ

兄貴は私の手に封筒をおいた。

その封筒の中を確認する。

10万ちょっと・・・


「さぁ・・・もう寝な・・・?」

「うん。ありがとう」

私は一言そう言って部屋を出て行った。



私の名前は、皐(さつき)。

本当の名前ではない・・・

兄貴がつけてくれた名前。

私は6年前両親に捨てられた。

その時、睡眠薬で眠らせられていたから何も覚えていない。

起きた時、私は夜のネオン街にいた。

ヤクザが私を囲んでいた。

私は何が起きたかも分からずに無我夢中で逃げた。

怖かった。お母さんはどこ?お父さんはどこ?

いくら探してもいない。

いるのは厚化粧した風俗女、ロン毛の男、酔っ払いばかり。

この時は恐怖以外の何者でもなかった。

でも、いくらなんでも大人の足にはかなわない・・・

後ろから追いかけてきたヤクザ達に捕まった。

その後事務所に連れて行かれいろいろな事を聞かれた。

怖かったから全部話したと思う。


「ここに居ないか?」

組長が私に言った。

すごくやさしそうな笑顔で言ってくれた。

私はなぜか嬉しくて

「うんっ」

頷いた。

すぐにお母さんとお父さんに会えると思ったからだろう。