ある晴れた日曜日の朝。

俺はこの町に引っ越してきた。

それは、まだ幼稚園児だった5歳の頃。

仲の良かったやつらと別れるのは本当に寂しかったし、この町で新しい友だちができるかも、正直なところ不安でいっぱいだった。


なんで転勤断らなかったんだよー、親父ー。

夢の一戸建てかは知らないけれど、俺は団地でも全然よくて、というか、そこで育ったからかな、むしろ団地のほうが落ち着くくらいだ。


ああ、近所の公園に埋めたどんぐりの種、ちゃんと芽を出してくれるかなぁ……。

引っ越しのトラックに揺られながら、そんなことばかりをぼんやり考える。

窓の外を流れる景色は、いつの間にか、初めて見る町並みにすっかり変わっていた。

と、そのとき……。


「着いたぞー」


親父の声がして、トラックが止まった。


「……」


ここかぁ。

ウキウキとトラックを降りて家を眺めに行った親父とお袋とは対照的に、俺はなかなか降りられず、今さらながらに胃をキュッとつままれるような緊張が走る。

友だち作りも、幼稚園も、近所で遊び場を見つけるのも、全てが最初から始まる、新生活。

団地での生活がとたんに懐かしくなった。