『もう君を離したりしない』
昨日の月9のドラマで、主人公の男が口にした、歯の浮くようなセリフを思い出した。
この危機的状況は、あのクソ寒いB級ドラマにとても似ている。
「……っ…」
突然の衝撃と、すぐ目の前の綺麗な顔に息を飲んだ。
転校初日、なぜか私は“出会ってまだ数時間も経ってない男”を押し倒していた。
ただ数年ぶりに会う幼なじみに、心躍らせていただけなのに。
何故こんなことになっているのか、自分でも理解できないのだから困る。
私の腕の間で感情のない目を向ける彼は、まっすぐ瞳を捉えて離してはくれなくて。
「…何?」
静寂を破り、形の良い唇から発せられたその声に、頬がカッと熱くなった。
「……なっ…」
「何してんの?」
先ほどよりも赤みの増した唇で、彼はまた問いかける。
自分の腕の間と足の間で彼を組み敷いてしまっているこの状況に、思考回路が完全に停止してしまった。