「ん……」

 ずっと眠り続けていたつばちゃんが、身じろぎをした。

「翼っ?」

 おばさんが驚いたように顔を上げ、私もつばちゃんに近づいた。
 その日はちょうどお兄ちゃんも病室にいた。

「……母さん……?」
「翼!」
「つばちゃんっ……」

 やっと、目を開けてくれたつばちゃんは、おばさんの顔を訝しげに見つめている。

「ここは……?」
「病院よ、貴方事故に遭ったの。覚えてる?」
「事故……」

 つばちゃんは起き上がろうとする。

「無理しないで」

 おばさんがそれに手を貸した。

「……あれ……」
「どうしたの?」

 つばちゃんは、驚いたように自分の手のひらを見つめている。
 おばさんが不思議そうに首をかしげた。

「色が……わかる」
「「「え……」」」

 寄寓にも、私達全員の声がはもった。

「つばちゃんっ」

 つばちゃんはゆっくりと病室を見回して、お兄ちゃんと目が合うと、

「有紀……」
「おう。気分はどうだ?」

 お兄ちゃんに話しかけた。

 ふと、違和感を覚える。
 どうして、つばちゃんは私を見ないんだろう……?