戦況はなにやら有利に進んでいるようだ。
 そのくらいしか紗也にはわからない。

 始めは物珍しさから、何もかもに興味を引かれていた。
 だが絶えず飛び交う言葉の大半は紗也にとって意味不明で、司令所内が活気に満ちているほど自分だけ蚊帳の外に置かれているような気分だった。

 総大将ってこんなものなのだろうか。
 何かする事はないのか。
 そう思った紗也は和成に尋ねてみた。


「私は何かしなくていいの?」
「あなたは健在であられるだけで皆の力になっております」


 そう言って和成は優しく微笑んだ。

 意味がわからない。

 滅多に見る事のなかった和成の笑顔を今日は何度も目にしている。
 そしてもうすぐ夜になるのに、今日はまだ怒鳴られていない。