ケータイ小説 野いちご

策士な保健医~恋の速度はAndante~

♪第2楽章 恋の花が芽吹く初夏
♯ 第2小節 クールな少女の真の笑顔

【美桜 Side】



「はぁ~。」

「すっごい深い溜め息…。美桜?そんなに気になるなら仲直りすれば良いじゃない。声掛けてくれてるのに、喋るの挨拶の時だけにして避けてるのはあんたじゃない…。そろそろ素直になったら?」

教室の自分の席に着き、深い溜め息をつくと一緒に登校してきた恵美がちょっと呆れ気味に言った。


結局【三上先生の一件】があって以来、霧島先生とは挨拶以外の言葉を交わしてない。

もう5月の中旬だから、約1ヶ月は口を利いてない。

プライベートの方でも、私が【おかず】を持って行くのを避けてるからママが届けてる。


梅雨時期の6月にはまだ早いのに、【三上先生の一件】があってから私の心は梅雨入りしちゃったみたい。

素直になって、霧島先生に本当の事を確かめたいけど…
結果を知るのが怖くて…聞けないままだった。

寂しくなるのは……もう嫌だよ。


先生は気づいてるかな……私が、本当はすごく寂しがり屋だって事。
きっと気づいてないよね?
【頑張り屋な私】で隠してるから……。


私の心に梅雨明けは来るのかな……?


「ねぇねぇねぇ!“めぐちゃん”たちは聞いた?2年に今日から転校生が来るんだって!しかも超イケメンらしいよ!」

私たちとわりと仲良くしてる女の子が興奮気味に教えてくれる。

「えっ!聞いてないよ?…どこからの人?名前は?」

恵美じゃなく、なぜか奏がもの凄い勢いで聞いていた。(笑)

「静岡県からの転校生って聞いたよ?…お父さんの仕事の都合で来たんだって。名前は確かねぇ…えっと、速水 蓮(はやみ れん)くんって言ってたかなぁ?」

「…っ!」


速水先輩!?……って、恵美!!


速水先輩の名前が出た瞬間、恵美の様子が気になった私は、彼女の方にそっと視線を向けた。
すると、やっぱり恵美は動揺していた。

表に出ないように、本人が必死になって抑えてるから教えてくれた子や紗斗美は気づいてないみたいだけど、恵美の中学校時代を知ってる私と奏は気づいてしまう。

「恵美!!大丈夫?顔、真っ青になってきてるよ!」

「吐きそう…。」

奏が慌てて聞くと、恵美は絞り出すようにこの一言を言った。

「みんな、おは…」

藤崎先生が来た!

「藤崎先生!!恵美を保健室に、早く!」

「…えっ!?一体どうし…」

「状況説明は後!とにかく吐き気を訴えてるから、早く保健室に!」

「分かった!みんな、HRちょっと待っててね!」

藤崎先生が恵美を抱きかかえながら、クラスの全員に叫んだ。

「美桜、恵美は大丈夫。とりあえず、あたしが保健室へ行って霧島先生に状況説明してくるよ。…何があったのかは知らないけど会いたくないんでしょ?霧島先生と…。それにしても、美桜は本当に先生のこと嫌ってるよね。(笑)」

「奏……。うん…大嫌い。」

何も言わなかったけど、先生を避けてるの気づいてたんだね。
でもこの口っぷりだと、私が先生のこと【好き】っていうのには気づいてないみたいだけど。


恵美は保健室へ運ばれていった。



無理もないよね…。
先輩のお父さんの転勤だったから、仕方なかったとはいえ……
恵美は先輩の事大好きだったのに、一方的に【別れ】を切り出されちゃったんだもん。





きっと、今でも速水先輩の事…好きだよね?恵美……。

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