その後の竹井兄妹というと、兄の遼は実はゲイだということが明らかになった。

長い髪と粗暴な態度は校内でずっと孤立していた証のようなものだった。


しかし、咲たち生徒会の理解によって差別を受けずに日常を過ごせるようになり、今では言葉遣いは荒いものの、生活態度は以前よりずっと真面目になった。


しかも、実家が大富豪で遼はアメリカの学校で博士号も得るほどの知恵者でもあった。
そんな遼から雪美はよく話しかけられるようになっていた。



「竹井先輩、ここ最近は菅野先輩を追わないんですね~」


「ああ・・・。最初はインパクトの強いことをやって咲に俺のことを覚えてほしかったかな。

でも、好きな人に一途な男を困らせるほど俺はできてない人間じゃないんだよ。
それに、無理に求めなければ咲は俺にいろんなことを聞いてくるから。」



「菅野先輩は勤勉ですからね。私も竹井先輩とお話すると得ることがいつもいっぱいで楽しいですよ。」



「楽しい・・・か。ほんとに素直だな。雪美は・・・。
なのに、初対面ではあんなに強気でさ。

特別な目で見たり、差別したりしなければ、少しの時間でお互いのいいところも見えてくるもんだな~ってこの学校に入ってわかったよ。

アメリカの学校だと、わりと柔軟に受け入れてくれてたから学業はやりやすかったけど、逆に心をさらけだす会話まではできなくてさ。

それは俺自身が、かたくなだったのか、委縮してたからかは自分でもいまだによくわかんないんだけどな。」


「遼さんが日本人だってことですよ。きっと・・・。
私も説明はうまくできないですけど、自分の心が壊れないようにうまく壁を造りあげるのも日本人だけど、壁のこっち側に来た人をさりげなくもてなすのも日本人なんじゃないかな~~~なんて・・・。

あはは・・・意味不明ですね。」



「いや、今の俺ならなんとなくわかるよ。
うまいこと言う・・・。

俺がゲイじゃなかったらおまえに彼女になってもらいたかっただろうな。
いっしょに居て心が安らぐ女。

まぁ、友人としても心が安らぐ女に違いないからこうやってつるんでやってるんだけどな。」


「つるんでやってるって・・・!ひどぉ~い・・・。
私知ってますよ。

狙いは会長、菅野咲でしょ。
ケリ入れられて惚れちゃったってことも素直に言えないで隠れてるんだもん。
それじゃかわいい過ぎますって。
私と話なんかしてないで、菅野先輩のそばにくっついていたらいいじゃないですか。」


「それができればおまえと話してないわい!
いや、咲は話しかけてくれるんだって。

俺の心の中が痛かったのを気づいてくれた。
俺に襲われるんじゃないかって想像もついただろうに、さわやかな笑顔で接してくれる。

それが無言で『いい友人としてつきあおう』って聞こえてくるみたいでさ。
手を出すとかいう次元じゃないんだ。

いいやつで、妹じゃないけど・・・もうメロメロになる。」


「恋する遼さんはステキです。
あ~~そっち方面はぜんぜんわかんないですけど、思うのは自由です。」


「雪美は頭がとくにいいわけじゃないのにいいこと言うなぁ。」


「なんか余計なこと言いましたね。」


「あれ?けど・・・雪美もいつのまにか俺のこと先輩と呼ばずに遼さん、遼さんってお気軽扱いしてるじゃないか。

あはは・・・それは訂正しなくていいよ。
おまえは許可してやる。
遼さんっていわれると話しやすいし、楽だから。
じゃあ、休憩時間わざとつきあってやったんだから、セクハラ教師につかまるなよ。」


「ありがと~遼さん。」