雪美は風紀委員長の松永のファンである・・・。

というよりは、気はやさしくて力持ちというイメージが好きなのかもしれない。

よって、柔道を習っていてなおかつ、華道部所属のがっしり型イケメンの松永を尊敬し、言われたことは絶対服従?に近い状況になっていた。


部活の紹介後、松永からの勧誘をうけ、あっさりと華道部へ入部した雪美は指先を剣山で怪我をしながら生け花の稽古にいそしんでいた。


学校内ではすでに、男子テニス部内で生徒会長の菅野咲がリハビリの仕上げ状態で毎日下級生たちと練習をし始めている話題でにぎわっているというのに、ぜんぜん興味もなし・・・といった様子で生け花に集中している雪美なのであった。


そして・・・夜。夕飯後のひととき・・・。



「いたぁーーーーーっい!」


「さっきから何回叫んでるの、この子ったら。
必死にがんばっている姿はわかるけど、あなた素質ないからやめた方がいいと思うわ。」


「ひどい!ママ。私だって新人戦に出るのよ。
そりゃ、入賞なんてできっこないでしょうけど、でも・・・松永先輩に1年生の代表として出させてもらうんだもん。

絶対がんばらなきゃ!
それに家には咲っていうがんばりやさんもいるでしょう。
私だって負けられないもん。」


「そりゃ、咲くんはもとから素質もあってがんばれば素晴らしいのがわかっているから素直に応援できるけどぉ・・・雪美ちゃんは花瓶の水をとりかえるだけでお花を折っちゃう子なんですもの・・・。

がんばりやなのはママの子だから、とっても気持ちはわかるのよ。
でもね・・・まわりがもう・・・大変なのよねぇ。」


「私が迷惑かけてるっていうの?」



「だって・・・そっちでテレビ見てるはずの人たちが、悲しいシーンでもないのに、痛がったり、痛そうな声をあげてるんですもの。

ママだって気になっちゃって他のことが手につかなくなっちゃうわぁ!」



「えっ!!?」


「雪美の白くて細くてきれいな手が、指が・・・血で染まったり、絆創膏だらけで授業受けてる姿がもう・・・痛々しすぎるんだよぉ。

そりゃ、俺の直接授業を受けてないっていってもな、通り過ぎるのにその指はもう心配でさ・・・。

そこまでして華道やらなくても・・・うちのクラブのマネージャーやればいいじゃないか。
そしたら、俺にも咲にもずっと会えるしな。」



「男子テニス部のマネージャーなんてやりたい人いっぱいいるじゃない。
私なんかが入ったら、他の女子の先輩からいじめられそうだし。」


「それに3年生は秋には引退準備でしょう?
私は私の高校生活をがんばらないと。」



「クールなんだねぇ・・・雪美ちゃんは。
でも、そういう冷静な考えを持ちながら熱い練習をしている雪美を俺は昔から愛してるぞぉ~~~」



「うう~~キモッ!てる先生は2年の女子の間でよく変態って言われませんねぇ。」



「俺が変態に聞こえるのは雪美だけなのかもなぁ。
俺の受けもちの生徒たちは、けっこういい感じに評価してくれてると思うぞ。
まぁ・・・来年あたりは担任になって、ここにいるときとは別の俺の魅力に気がつくだろうけどな。あははは。」


「転勤すればいいのに!」