―「ずっと4人で居ような!」―
 あの時、ちゃんと4人で約束したはずだったのにね...。
幼馴染に恋なんてしなければ、こんな事にならなかったのに。
幼馴染に恋なんてしなければよかった。心からそう思った。こんなに傷つくこともなかったし、苦しい思いをすることなんてなかったから・・・。


 ― 中学入学式 ―

「うそー!?美紗とクラス離れちゃった...」
「は!?えっ、まじ?」
「まじ。....!?っ」
「どうかした?」
「どうしよう、颯人と同じクラスだ....」
颯人と同じクラスなんて絶対に嫌だ。嬉しいけど、発言とかできないよ...。
今の気持ちが顔に出ていないかチェックっと。
あそこに颯人いるじゃん。よく平気で笑ってられるよね。こっちは、人生最大の大ピンチなのにさ。
 ― キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン ―
ふう。このクラスあんまり仲がいい人いないなぁ。まあ、いっか。何かのチャンスかもしれないし。
「あれ?乃愛?」
「ん?」
めんどくさいな。誰だよ。
「あ、日和じゃん!」
「同じクラスだったんだねー!」
「ねえ日和聞いてよー。よりにもよって、颯人と同じクラスになちゃったんだけど・・・」
「あ、乃愛ってまだ颯人の事好きなの?!」
「え、あ、うん」
まだって、ずっと好きなの知ってるくせに何だよ。
「乃愛って本当に、一途だよね」
「何か、よく飽きないっていうかなんつーかさ、乃愛は颯人にベタ惚れだよね」
「はは・・・、まあずっと一緒にいたし、結構色んな事知ってるからねw」
幼馴染に恋するって辛いんだよね・・・。こっちは幼馴染って思ってても、颯人はどう思ってるかわかんないし。
颯人を見かけたら、仲が良かったころの思い出が頭の中を遮る。
告白なんてしなければ、仲が壊れることなんてなかった。

「えー、今日は6月2日に開催される体育祭について決めるぞー」
「じゃあー、まずはクラス対抗リレーの順番から決めるか」
「滝澤の次は・・・遠藤でいいか」
はっ!?先生何言ってんだよ。おいおいおーい、待ってよ。颯人にバトン渡すとか無理だから。
全然喋ってもいないのに、いきなりバトン渡すとかありえないからw
あまり意識しすぎると余計に、渡せない。
これは、一先ず先生に・・・
「・・・先、先生!」
「どうした、滝澤」
「あ・・・いえ、何でもないです」
ああああ、やっぱり言えない。みんなの視線が痛い。しかも、颯人まで見てるし。見てんじゃねーよ、って言いたいところだけど、キャラが崩れてしまう。
本当に体育祭とかめんどいわ・・・・。行事の中で一番嫌い。太陽がジリジリとなる中、あんな暑苦しい歓声を耳にするなんて思ったら今にでも倒れそうなくらいなのに。
休み時間。
日和がニヤけながら、こっちに来る。嫌な予感。日和が机の前に来たかと思ったらいきなり口を開いた。
「乃愛どんまいだね!遠藤にバトン渡せるといいね♪」
・・・・ん?・・今一瞬だけ日和の口元が笑った気が・・・・。
もしかして何か企んでないよね・・・・?企んでなければいいけど。
―放課後。
美紗にバトンの順番が颯人の前が乃愛っていうのを伝えたくて、げた箱で待っていた。階段から駆け降りてくる足音が、聞こえて目をやると颯人を混ぜた数人の男子達がこちらへ向かってくる。なぜか慌ててしまって、すぐさまげた箱の陰に隠れてしまった。すると、男子達の話声が聞こえてきた。
「俺さ、滝澤からバトンもらうんだけど。俺さ、あいつとあまり喋らないから気まずくね?」
「あぁ、あいつ意外と大人しいし喋っても話が続かなそうだよな」
「はははっ!それ言えてる。颯人どんまいじゃん」
はぁー・・・・結構ショックなんですけど。男子も案外言うのね・・・。颯人があんな風に思ってたなんて、全然気がつかなかった。
それ以来私は、前よりももっと避けたりするようになってしまった。本当は自分でもわかってる。ちゃんと現実と向き合わなければいけないことだっていうことを・・・・。でも、自分が傷つくのが怖くて中々向き合えない。現実と向き合わない自分が、ずるいことだって言うこともわかってる。好きな人が困っているのも、話すきっかけができないのも自分のせいだと思ってるから・・・・。
「乃愛ー、最近元気ないね?何かあった?」
あ・・・、顔にでてたかな?周りからは元気がないように見えてるんだ。
美紗が心配そうな顔で、見ている。
「・・・全然大丈夫だよ。この通り元気だよ♪」
大丈夫って言っておきながら、顔に出てるかも・・・。あれから、颯人の事はあまり考えないようにしていた・・・。だけど、いつも頭の中を過ぎるのは颯人の顔だった。頭がよくてスポーツもできて面白くて、周りの人を笑顔にする。女子ならだれもがすきになるタイプだ。颯人の事が嫌いだという女子も中にはたくさんいる。颯人はいい人だけど、たまに女子に対してひどい事を言ったり、授業中に他の男子とうるさかったりする時があるからだと思う。
―体育祭当日。
校長先生のあいさつと共に始まった、中学校生活初の体育祭。
3年の先輩達は今年が最後の体育祭だからといって、妙にはりきっている。2年生の先輩達は、かったるそうに喋っていた。1年生は初めての体育祭だからといっては、緊張しすぎの様子だった。
開会式が終わり、美紗と喋っていた。
「あー・・・、そーいえば100m走に出るんだった。」
「そうなんだ!応援してるね♪」
「おいおい、他クラスを応援してどうするw」
「あ、そうだったーw」
無事に第一種目の100m走が終わり、私の種目の障害物走が始まった。クラスの声援と共にゴールをしていく人たち。私はタイヤ運びの所で、タイヤのひもが切れて5位という結果になってしまった。練習の時には、1位だったのに当日にひもが切れるというアクシデントが・・・。
午前の部も終わり、午後の部へ。
お弁当を食べているときに、日和が話しかけてきた。
「午後はいよいよ、リレーがあるね」
「うん・・・。嫌だなー、日和順番変わってー!」
「変わってもいいけど、乃愛のためだからw」
「はいはい・・・。頑張ります!」
「そうこなくっちゃ♪応援してるからねw」
お弁当の時間も終わり、午後の部へとなった。
午後の部は全校生徒でのローハイドと大縄跳びとクラス対抗リレーだった。
ローハイドと大縄跳びでは2位という結果で終わり、クラス対抗リレーの種目へ移った。私の番まであと2走者。そう考えているとあっという間に自分の番が来てしまった。全力疾走で颯人にバトンを渡した。緊張するどころか、颯人に渡すことさえも忘れてしまっていた。
惜しくも1点差で4組に負けてしまったけど、良い体育祭になったと思う。クラスの一人一人が団結し最終的には笑顔で終わることができた。

  1ヶ月後の朝、、、。

「てかさぁ、颯人のどこがいいわけ?」
「顔でしょ、顔の他に何があるんだよw」
「いやぁ、何かもっとこうねぇ...。あれがうまいとかぁ。」
教室に入ろうとすると、クラスの女子達が颯人について語っていた。顔とか面食いじゃん。心の中で、叫んだ。
一日中考え事をしていたら、あっという間に放課後に...。あああああああ!
今日...日直だった。忘れてたあああ!
教室に残って日誌を書いてると、廊下から足音が...そして誰かが教室に入ってきた。一瞬見て、日誌に目を戻したが誰かと気になりもう一度みると颯人だった。いやあああああああああああああ。教室で二人きりとかないわ...。
緊張のあまり字が上手くかけない。よれよれになってしまった。
その日の夜、学校でのことで後悔をしていた。せっかくのチャンスを無駄にしてしまった...。話す機会だったのに何もせずにおわってしまった。
いつも後悔ばっかり。何でいつもチャンスを逃してしまうんだろう。
私の所にある噂が回ってきた。それは、颯人と心が付き合ってるっていう噂だ。聞いた時には、びっくりしたけどデマだろうと思って気にしないでいた。このときはまだ、ある事件が起きるなんて誰も思ってなかった。
  1年生が終わるまで2カ月をきった時だった。いつものように、登校してクラスに入ろうとした時、いつもよりクラスがザワついていた。気になり、日和に話を聞くと颯人が心の事を誘った。という事があったらしい。私は、すごく傷ついた。