ケータイ小説 野いちご

Calling -true name-

aim.03 音



よく晴れた休日。

朝起きて、洗濯をして、掃除をして、ご飯をつくって、本を読みながらゆっくり食べたのに、まだ一日の大半が残っていた。



『あーごめん、今日は親がこっち来るんだわ、視察に』

「またあ、愛娘に会いたいんでしょ。親孝行してきてね」



真衣子を誘って出かけるプランも、ダメだった。

無駄に時間をかけて流しをピカピカにして、カゴに立てていた食器もちゃんと拭いて棚にしまう。

もうこれ以上、部屋の中でやることがないと認めるほかなくなった時、外出しようと決めた。


ひとりって、暇だ。

違うな、家にいた時だって、暇で暇で仕方ない時はあった。

ひとりって、タイミングをつくるのが難しいんだ。


もうすぐご飯だから、その前にあれやっちゃおう、とか、夜はお客様がいらっしゃるから、早めにお風呂に入らなきゃ、とか。

そんなふうに、自分以外の理由で何かのタイミングを決める必要が、全然ない。


いつ何をしてもいい。

そうすると案外、なんでも先に先に手をつけてしまって、ぽっかりと時間があく。


私意外と、家事が得意なのかな?

6畳の部屋を綺麗にしてるくらいで、そんなの調子に乗りすぎかな?


そんなことを考えながら、春らしい明るい色のワンピースに、歩き回るつもりでぺたんこの靴を履いてアパートを出た。



目的地は、決めていた。

私のアパートと、大学の、間の駅。

高架から見える、曲がりくねったメインストリートを囲む商店街が、ひなびてていかにも雰囲気がよさそうで、ずっと気になっていたのだ。


2列しかない改札を出て、車窓からの景色を頼りに商店街の入り口を探す。

駅前の通りから少し奥まったところにそれはあって、想像どおり、なんともいえない枯れた風情が愛らしい、昔ながらの商店街だった。



「見ない子だねえ。新入生?」

「はい、お世話になります」



どうやらここは、同じ大学の学生たちが集まる街らしい。

住民ではないけれど、きっと私はここに通うことになる気がするので、にこやかに声をかけてくれた調剤薬局のおばさまに頭を下げた。

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