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8月に入って数日が過ぎていた。

セミの鳴き声がハンパなく大きい。

あたしは毎朝8時に起きる習慣になっていた。


貴之はあたしに宣戦布告をして帰って行った。


それに対しても何も思わない。

悔しいとか、苦しいとかの熱い感情。


あたしの過去で涙を流す貴之。

それでも心が動かない。

それもきっと、あの時に時間を止めたから。

この先、心なんて壊れたままでいい。

もうどうにもならないと知っているから。



ピンポーン

真夏の朝から家のチャイムが鳴る。

誰が来たのかすぐに分かってしまった。


「はーい」

「おはよ!」


めんどくさいあたしがドアを開ける。

予想通りそこにいたのはワンピース姿の明音だった。


「朝早くから何か用?
あたし、忙しいんだけど」

「話したくて来た!」

「それだけだったら
帰ってくれない?」


無理やりに閉めようとしたドアに必死でしがみついてくる。

意外に力強い。

その根気に思わず負けてしまった。


何もない殺風景な部屋にあげると珍しそうにウロウロとしていた。


「お茶一杯飲んだら帰ってよ」


コポコポコポ仕方なく、お茶をグラスに2人分注ぐ。

そしてテーブルに持っていく。