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時は過ぎ、ついにやってきた7月最後の日。

さっき講習もやっと終わった。


「貴之、次パス練するぞ!」

「おう」


あとは部活に励んで花火に向かうだけだ。

陽平はずっと時計ばかりちらちらと見て気にしていた。


時間が近づく度にチェックする回数も増えていく。

蒼次は笑うことしか出来なくて、隅っこでこっそりと腹を抱えて笑っていた。


「3,2,1,0!
お先に帰りまーーす!」


それだけを言って走り去る。

陽平は去り際に一言、


「貴之、蒼次も急げよな!」


たったそれだけ。

ほかにも言うことはまだまだあるはずなのに。

せめて先輩に、お疲れ様でしたぐらい言えよな。


待ち合わせ時間は7時頃。

地元の神社で待ち合わせすることになっている。


それから見晴らしのいい川岸まで見に行こうと決めていた。


俺は人ごみを避けてその待ち合わせ場所に到着した頃。


そこで待っていたのは準備万全の陽平だけだった。


「なんだ。お前かよ」

「俺で悪かったな」


きっと早めに用意して、明音ちゃんと抜け出すつもりだったのかもしれない。


浅はかな考えだ。