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突然、貴之があたしの目の前に再び現れた。


本当は貴之がこの高校にいるってことは入学してすぐに気がついていた。

でも逢いたくなかった。


過去に最悪な別れ方をしたからでも、振ってしまったからでもない。


何があってもやっぱりあの男は憎くて、嫌いな奴だから。

…逢いたくない。



貴之に正体がバレてしまった次の日。

いつも通りに教室に向かった。


あたしは何も変わらない。

再び逢ったけれど、感激とか嬉しいとかそんなキレイな感情なんて全くなかった。


だからかな。

ちょっと脅えただけだった。

涙なんて一滴も流れなかった。


それはきっとあの時に涙を全て枯らしてしまったからだろう。


登校してからだけどクラスに入るとさらにチクチクと視線が刺さっている。

小さな声が周りから聞こえてくる。


『あの人だよ。
貴之くんが探してたって人』

『あの人が
中野くんの元カノらしいよ』

『あんなにもブサイクな人が!?』

『貴之くんの好きなタイプ
全然分からないねー』


なんていうヒソヒソ話があちこちから聞こえていた。


そして自分の窓側の一番奥の席に座る。


そして一時間目の英語の用意をしようとしていた。