真昼である。青年、小宮はコンビニのビニル袋の中に入っている牛乳のことを気にかけながら、階段を駆け足で登っている。牛乳というものは生温くなると、率直に言って、不味い。熱かったり、冷えてたりすると良いのだが生温いのは本当に駄目だ。普段は気にも掛けない匂いと、白い液体がねっとりと舌に絡み付く感覚は嘔吐感さえ稀に催す。本格的な夏が終わったとはいえ、9月は未だ暑い時期だ。蝉も勤務期間中である。

想像してしまったことで、小宮は食道が僅かに収縮していることを感じながら、一向に足を動かす。背中に汗が少しばかり滲む。彼は屋上手前の階段の踊場を目指していた。

府立の中学校であるが故に薄汚れている学舎は、5階建てだ。青春ドラマでよく見られるような屋上への侵入は許されていない。そのために、小宮はよくその手前の踊場で昼飯を食していた。使用されていない机や椅子が多量置かれているそこは、人通りが少ない。もともと五階には図書室と、特別教室しか存在しないので、昼は閑古鳥が泣き喚いて煩い程である。