あれから結局、二人は会話をする事なく
放課後までを過ごした。


ただ、放課後になっても
昼間から降っていた雨は降りやまない。


大勢の生徒が下駄箱で立ち往生していた。




「......傘、忘れた」




教室のロッカーをあさっていた手を止め、
唐突に理恵が呟いた。




「まずいなぁ」




ため息混じりに言う。
皮肉にも雨は降り止む気を一切見せない。


傘がなくて困っているのは
どうやら理恵だけではないらしく、
廊下のあちこちからその手の話題が耳に入った。




「走って帰るか。仕方ない」




学校から理恵の家までは
走っても30分はかかる。