「悪い、待った?」



生徒会室から出てきた彼に、あたしはふるふると首を横に振った。



「ごめん、あんま時間取れないんだけど」


「ううん。忙しいんだもんね。大丈夫」



学校の最上階の端。


放課後のこの時間は、もう生徒会にかかわる人くらいしか通らない。




あたしはこの人に、恋をした。


高校2年生にして、初恋。


遅いよね。



だけど、いいんだ。


だって、今まで、なんてあたしには必要ないから。


彼がいてくれれば、それで、いいから。


経験がなくたって、彼は笑ったりしないから。