もうすぐ五時なので、美梨は、旅館内にあるエステサロンに行く為の準備を始めた。


エステなどいいと言ったのに、涼太は部屋の予約と共にエステの予約もしてくれた。

なんでもこの旅館のエステサロンには、カリスマエステティシャンがいると口コミ情報があり、ぜひ、カリスマにやってもらえ、と涼太は言う。


「美梨がエステ行ってる間、
俺、温泉入ってくるよ」

「うん。わかった」

「それから、俺、携帯、
昨日現場に忘れたみたいだから、
電話しても出ないよ」


畳の上に寝転んだ涼太は、
出掛ける美梨にそう言った。




水色の薄いカーテンで仕切られた個室。


エステサロンの雰囲気は飾り気も素っ気もなくイマイチだったが、贅沢を言う気はなかった。

せっかく涼太が予約してくれたのだから。


カリスマエステティシャンは、
若い女性だった。


目が細く、おせじにも美人ではないけれど、薄いピンク色のユニフォームを身につけた彼女は清楚な感じだ。


「よろしくね」美梨が言うと、

「はい。
こちらこそよろしくお願いします」


エステティシャンは控え目に言った。