「すごく言いにくいんだけど…

もう終わりにしよう」




ホテルのラウンジで美梨は言った。




「えっ…」



涼太のコーヒーカップを持つ手が
宙で止まる。




「なんで突然?」


涼太はなぜか半笑いで言った。




「突然じゃないよ。前から
そうしなきゃと思ってたんだよね」



美梨がさばさばとした口調で言うと、
涼太は上目遣いに訊いた。



「…やっぱり、あのことが原因?」





涼太が言う『あのこと』とは、
美梨32年の人生のうちで
一番恥ずかしい事件のことだ。