どうしてこんなことになったんだろう、とは、なるべく思わないようにしようと思う。

……余計に緊張しちゃうし。





翌朝、いつもより早く目が覚めたあたしは、朝食作りの手伝いにはまだ早い時間帯だったこともあって、展望台に向かった。

太陽がまだ上っていない今の時間は、昼間の暑さとうって変わってびっくりするほど涼しい。

薄手のパーカーを羽織っていても動いていないと身震いもするほどで、あたしは腕をさすりながら展望台への長い坂道を上っていった。

のだけれど……。


「生麦、生米、生卵、東京特許許可局、あめんぼ赤いな、あいうえお……」


顔の体操や発声練習を終えて、いざ声を出そうとした矢先、思わぬ人に会ってしまった。


「何してんだ、こんなところで」

「……ま、間宮さんこそっ。こんなところで何をしているんですか。てかひどい!さっきからずっと盗み聞きしてたでしょっ!」


それは、間宮さん。

今頃はまだ……いや、やっと眠れて民宿の布団の中にいるはずの彼が、なぜかここにいた。

観光といえば海というこの町の展望台は、そんなに大がかりなものではなく、出入りも自由。

けれど。