「あ、あの、間宮さん。本当に今からやるんですか? 失礼ですけど、夜まで待ったほうがいいような気がするんですけど……」

「うっさい。いいんだよ、わざわざ長い坂を上ってきたんだ、さっさと準備しろよ」

「……分かりました」


それから約1時間。

つき合え、と言われて思わず間抜けな声で返してしまったけれど、間宮さんとあたしは今、高台にある展望台に来ていた。

不機嫌全開な間宮さんに言われて準備を始めたのは、まだ昼前だというのに、なぜか花火だ。


「この町で一番見晴らしがいい場所はどこだ」と聞かれて「展望台でしょうかね」となんの気なしに答えたら、ここに来てしまった。

展望台のそばには平らに均された場所があるのだけれど、そこに円を描くようにして花火を並べるのがどうやら今のあたしの仕事らしい。


「おい、お前。ちゃんと等間隔に並べろよ。そこズレてるだろ、不器用か」

「はいっ、すみません……っ」


間宮さんはといえば、目の前の柵に寄りかかって、水を飲みながら細かく指示を出すだけ。

少し不公平な気もしないでもないけれど、事の発端はあたしなので、そっと胸にしまって、黙々と花火を並べていく。