7月。

もうすぐ夏休みだという矢先、あたしーー小菅菜月は、ずっと想いを寄せてきたハルに、告白すらできないまま失恋した。


  追伸:俺、彼女できた。
          ハル


ハルーー志賀春人からの手紙の最後には、何度読み返してみても、そう書いてあり、今年の夏もハルと一緒におばあちゃんの民宿を手伝おうと、ひとり意気込んでいたあたしは、その気持ちがとたんにしぼんでしまった。

彼女ができたなら、あたしと民宿の手伝いをするより彼女を優先するに決まっているよね……。

仕方のないことだと分かってはいても、胸が苦しくなって、鼻の奥がツーンと痛い。


「あ、いたいた。菜月、次、移動教室だから早く準備しよ。トイレに行くって言ったっきり、学食に戻ってこないんだもん、探したよ」


昼休みがもうじき終わる教室。

そこの窓辺に立ってハルの手紙をぼんやり見ていたら、あたしを探してくれていたらしい明梨がバタバタと教室に入ってきた。


「ごめん、ちょっとね。で、どこだっけ」

「音楽室。次、音楽だよ?」

「ああ、そっかそっか」


明梨に気づかれないように手紙を隠し、あたしも机の中から音楽の教科書を引っ張り出す。

もう5時間目か……。

昨日届いたハルの手紙がショックすぎて、それからあとの記憶が曖昧すぎだ。