俺は恐怖の館におぞましい絶叫を残して走り去った後、ぜぇはぁぜぇはぁ言いながら、あたりを彷徨っていた。


高二男子という目で見られればかなり気色悪いだろう。


いやーん、きもーい。とかギャルに言われても仕方ない。


しかし、不幸ながらも幸いなことに俺は、どこをどうひねっても高校生には見えない。

朝寝ぼけて鏡の前に立つと自分でも、何だこの小学生は、と思うくらいだ。


今は一応、何を着てくるべきかくそ悩んだ末に、何着ても同じだろがこんちくしょうと選んだ和誠の制服が、

『僕の中身は高校生ですよ~』

と健気に主張しているが、哀れにも見事に無視されていた。


いや、むしろこっちにケータイ向けてくる女子高生たちはこの制服がために、俺をコスプレした小学生だと思っている。


「きゃあ~、かわいい~」


「僕、お兄ちゃんに借りたのかな?」


「いやーん、お兄ちゃんっ子なんだぁ」


……妄想で俺をブラコンに仕立てあげないでください。


俺、永遠の現役長男だし。


そんな苦悩も今日に限っては有難い。


変態として見られるよりは、温かい目で見守られているほうがましだ。


「ユウ太、待ってよ。」


俺に負けず劣らずぜぇはぁ言っているヒロ人が俺に追いついた。


「かっこいい……」


「息を切らした美少年…」


「美しいわぁ」


黒い制服を着たお嬢様方がうっとりとヒロ人に視線を注いだ。


…いた。普通に高校生なのに、何しても変態には見えないやつ。


「お前って、やな奴だよなぁ。」


俺はしみじみと言った。


ヒロ人が目を見開く。


ヒロ人にすれば、大きな表情の変化だ。


「何で…」


ヒロ人が傷ついた声でつぶやく。


そりゃそうだ。一生懸命追いかけて来たと思ったら、やな奴扱いだもん。


「どうしたのかしら。」


「喧嘩…?」


「……兄弟よね。」


このへんは随分静かで人も少ないのだが、うっとりした目がどんどん増えていってる気がする。


さすがは宇宙人。


こんな時に実力を発揮しないでほしい。