……


「先生、何か御用すか。」


わたしは朝から不機嫌だ。


山田という名のイケメン教師に朝っぱらから訳も分からず呼び出され、不機嫌絶好調だ。


「…お前、俺と他のやつにたいする態度があからさまに違うよな。」


山田は少し困ったように笑って前髪をかきあげた。


幸い早朝なので、キャアッと黄色い声をあげる生徒諸君はいない。


それでもわたしはいつものくせで、今にも呪いをとばさんとする可愛らしい女子高生を探してしまった。


「どうした?そんなすんごい顔してキョロキョロと。」


「呪いを飛ばしてくる輩はいないかと。」

「わはっ、お前ってひょうきんだな。」


「先生は存在がうっとうしい限りですね。」


「……お前は俺が教師だということを忘れているだろう。」


「それで……何ですか?…廊下寒い。」


わたしは先ほどの屈辱を思いだして身震いした。


わたしは今日も誰より早く学校にきて、一人優雅な読書に興じていた。


ロベールがアンリエッタを抱きしめるキ
ュンキュン展開まであと少しだったのに、(ロベールって誰だよっ、ていうのは気にしないで下さい。)阿呆担任に廊下に呼び出されて、泣く泣く出てきたのだ。


わたしは良い子なので、先生の言葉を無視する訳にもいかず、こうしてブルブル震えている。


「ほんと寒そうだな…わるいなちびっ子。」


「ちびっ子呼びは無視してやるから、さっさと用を言いなさいっ」


「…ごめんなさい」


山田は山田のくせに殊勝に謝ると、人の悪い笑みを浮かべた。


「いや、ただ、教材運ぶの手伝って欲しいだけなんだ。」


あっ、そうかい。んじゃ、さっさと行きましょう。ロベールがわたくしを待っているんだよ!

アンリエッタが逃げたらどうするのかね⁈