02. ―――アマモリ。







 都心から離れた丘陵地の上に存在する大学の、




無数に乱立した教室棟の中でも古い建物にある、半地下の階段教室。





変な名前の精神科医でもある講師の落ち着いたトーンの声がマイクに響かされて少し耳障りだった。





無意識についての講義が終わると、数列前にすわっていた小木曾ルリが小さく手を振りながら近付いてきた。





「松井さん。今日の夜とかヒマ?」





「バイト」





「何時まで?」





「19時」





「ほんと? お願いがあるの」





彼女と話したことはほとんどない。





大学でサークルにも入っていない私には友達もいない。