一瞬、―――――。


夢かと…思った。


現実と夢の境目がわからないくらい、私は焦っていたのかもしれない。


目の前にいたのは、…紛れもなく、玲。


間違えるわけがない。

顔を見なくたって、わかるもの。


私の名前を呼びながら、腕に絡みついて

「大好き。」

だなんて、甘えてくる玲と。


「迷惑をかけるくらいなら、会えなくても我慢する。」

と潔く言い切る、清々しい玲と。


清廉潔白とは、玲のこと。

いつも正しくて、真っ直ぐで、自分に正直で。

後ろめたい人生を送ってきた私には、眩しくて妬ましく思っていたのも、事実。

深く知れば知るほど、こんなにもギャップのある人間は、玲以外、私は知らない。


小さくてフニャフニャした子猫のような見た目で、誰かに頼ってないと生きていけないような、イメージだったのに。

全てを切り捨てた、あの時。

芯が強く、勝気な一面もあったのかと、驚かされた。


いや、―――――。

私が知らなかった、だけ。


私が玲のことを、下に見ていた、だけだ。



「…れい、…なの?」



ゆっくりと、こちらに振り返る。

懐かしい顔は、私を驚いた目で見つめていた。



「玲…。」



すぐに、わかったよ。

だって、この2年間、一度も忘れたことがなかったもの。