「吉野、これ明日までに直せる?」


「あ、はいっ。」


「じゃ、よろしく頼む。」


――――――――。


あーあ。今日も残業かぁ…。

今日は早く帰れると思ったのに、な。


一人、パソコンの前で項垂れていると、

「どれどれ。見せてみ?」

隣のデスクから、諏訪先輩が顔を出す。


「あぁ。これなら早く終わりそうやん。」


「本当ですか?
諏訪さんなら早いでしょうけど。」


不貞腐れた声で、椅子に深く沈む、私。


「おまえ…。
テンション、落ち過ぎやろ。」


諏訪さんは呆れたように笑うと、私の頭をぽんと叩いた。


入社以来、諏訪さんはいろいろと世話を焼いてくれる、良き先輩だ。

ちょっとぽっちゃりした体型。

決してイケメンでは、ない。

だけど、ものすごく綺麗な恋人がいる…んだよね。


「美女と野獣ですよね…。」


一度、諏訪さんに言ったことがある。

今考えると、かなり失礼な話、なんだけど。


諏訪さんも、言われ慣れているのか、

「俺も、まじでそう思うねん。」

と、神妙な顔つきで返された。


その恋人とは、私の教育係だった桜木さん。


桜木さんといえば、―――。


私の、憧れ。

THE 出来る、女。


二人は来月、結婚する。