恐る恐る扉を押して開くと、果たして若い男性が立っていた。

タカと名乗ったその青年は、背はナナよりも少し高く、歳は30才前後といったところか。

黒い髪は長めだが綺麗に整髪されており、細身で色が白く、目鼻立ちは整い過ぎと言えるほどに整っていた。


人間と言うよりも、人形のようだとナナは思った。


タカの顔は無表情だが、ナナを見る漆黒の瞳には、微かではあるが優しさを漂わせているようにナナは感じた。


「やあ。入ってもいいかい?」

「は、はい。どうぞ」


タカの言葉使いは慣れ慣れしかった。まるでナナとは昔からの知り合いでもあるかのように。もちろん、会うのは今日が初めてなのだが。


タカを屋敷の中に入れ、扉を閉めるとナナは改めてタカを見つめた。


(どうして、この人の心が聞こえないのだろう。もっと近付かないといけないのかしら……)


「近いな。キスしちゃうぞ?」