それから数十年の歳月が流れた。


「ナナ……」

「はいはい、どうしたの? タカ」

「こっちへ来てくれないか?」

「ちょっと待って? お粥がもう少しで出来るから」

「どうせ食べられやしないんだから、直ぐ来てくれないか?」

「もう、仕方ないわね……」


ナナは濡れた手をエプロンで拭きながら、ベッドに横たわるタカに向かって歩いていった。その足取りは、少女のように軽やかだ。実際に、ナナの外見は数十年前と全く変わる事なく、今も少女のままだった。

一方、ベッドに横たわるタカは、顔は皺だらけだし、頭髪は白髪が僅かに残っただけで、歯は……

要するに、年相応な老人になっていた。