一方、コクリュウの屋敷では、ヤヨイが体全体から、不快感を醸し出していた。


コクリュウの部屋の、黒いソファーに座り、思いっきり眉をしかめてキリュウから、目を反らす。


ヤヨイの精一杯の、抵抗であった。


「昔さ・・・コハクも同じ表情を、僕に見せてくれたよ。」


キリュウは不愉快さを隠すことなく、ヤヨイに声を向けた。


ヤヨイはそんなキリュウを、チラリと見やる。


「アハハ・・・。
その琥珀色の瞳は、やっぱり僕にこそ、相応しい。」


黒檀の椅子から立ち上がり、ヤヨイに手を伸ばそうとしたキリュウは、眉間にシワを寄せた。

「キリュウさんは、何がしたいの?
琥珀色の瞳が欲しいの?
欲しいのは、瞳だけ?」


静かな怒りを含んだヤヨイの言葉が、キリュウの動きを止めたのだ。


「確かに私の目は琥珀色だけど・・・。
じゃあキリュウさんは琥珀色の瞳なら、コハクさんじゃなくても私でいいの?」


キリュウの肩が、ワナワナと揺れる。