兄の涙で肩がしっとり濡れた
それが…とても暖かく感じるんだ
〜朔月 side〜
グスグスと鼻をすすりながら離れた兄は、オレが想像していたより、情けない
情けない…けど、こっちの葉月兄さんのが好きだな
『この後、パーティーですよ?目、腫らしちゃ駄目です』
「う……そうだね。冷やしてくる。………後で、もっと話そ?」
『はい。伝えたい事はまだありますからね』
「…うん。兄として、しっかりするためにも。これからは、頼って良いからね。朔月」
『…はい』
葉月兄さんの部屋を後にした
オレの頬は緩みっぱなしで
「なに?どうした」
と、執事がうろたえる程に
兄さんの本音を暫く聞き、オレの浅知恵に恥じた
深く深く、悩んでいた兄さんの支えになれなかった
兄さんのしたことは最低で、許せなかった…けど、今のオレなら兄さんの支えになれなかった事を悔やむ
この、心の変化は少なからず、あの馬鹿達にあるんだろう…
初めて、大勢の仲間、友達ができ、視野が広がった
『葉月…兄さん、か』
広い視野で見えたのは、父だけに縛られるより、兄、と言う家族が増える喜び
信じれる人が増える嬉しさだった
『あの馬鹿達に見せられたってのが、癪だけど』
だけど、良かった
葉月兄さんときちんと話すことが出来て
オレを想ってくれて、頼りにしてくれていて嬉しかった
過去は消えない
……けど、空いたオレらの溝は今から埋めれば良いんだ
そう思えば自然と顔が緩むのは、致し方がない