初めてくる“高校”に戸惑う菜摘。

隆志は部活で何度かきたことがあるらしく、体育館までスムーズに案内してくれた。



「それでは引率の先生に従い、見学してください」



無駄としか思えない長い説明が終わり、ようやく校内見学の時間が訪れた。

先生に連れられ、説明を受けながら校内を回る。

見渡す限り、目に入るのは同じく体験入学にきた他校の生徒ばかりで、高校生はいない様子だった。



「つーか誰もいないじゃん!かっこいい人探せないよ」

学ランの袖を強引に引っ張り、口を尖らせながら言う。

「生徒は休みみたいだね。まあ土曜だし」

「そっかあ…」

引っ張る力を弱めて少し落ち込んだ。

ふたりを含めて1クラス分ほどの団体は、ワイワイと騒いでる。

目的を失った菜摘には、何がそんなに楽しいのかすでに理解不能だ。

「あ。でもこのあとの実習は2年生が教えてくれるらしいよ」

「ほんと?やった!」

微笑む隆志に、満面の笑みで応えた。