「お前は私のものだ
その深紅の刻印がお前を生かし、お前を縛る
限りある命を楽しむがいい」

生まれたとき、私の心臓は動いていなかったという
母親の顔は知らない
物心ついたときから私がいたのは薄暗い塔の中
何年も、かび臭い塔にいるのは私だけ
目にした事のある人間は数人だけだった
ここから出ることはできなかったが、
一度だけ外に出たことがある

ふとのぞいた部屋で、大人たちが話していた
耳を澄ませる私。聞こえたのは・・・

「あの子はもういらないでしょう」
「ああ、忌まわしい刻印を持つ者か」
「災いの起きぬうちにどうにかせねばいけません」
「殺せばよいでしょう。簡単です」
「国が滅びることに比べれば、なんてことはない」
「あの子が死んでも気がつくものは居るまい」
「それでは次の・・・・・」

心臓が大きく鳴った

私は、殺されるの?
この刻印があるから・・・
 
私は走った
うしろからいろんな声が聞こえた
でも、振り返らなかった

ずっとずっと、
息が切れても
足が痛くなっても
足から血が出ても
変な目で見られても
必死に走った

命が危ない

幼い私でもわかった
どこに行ってるかなんてわからない
塔から出たことなんてないから

どこかに私を助けてくれる人がいる

そう信じて

走った
走った
走った

その後の記憶なんてない

今生きてるだけで精一杯だから・・・