「じゃあ、いってきます」



ローファーに足を入れて、玄関のドアを開けようとする。



「待って」



けれどそれは甘く、低い声に遮られた。



「ん?」



開けかけたドアから手を離して、声がした後ろを振り向く。



「お弁当、忘れてるよ」


「あ!ありがとう…」



毎日主夫業ご苦労様です。



心の中で言いながら差し出されたお弁当を受け取ろうとした時、彼の長い指に私の指先が当たった。



「っ……」



つい、意識して肩を揺らしてしまう。



そんな私の分かりやすい反応に、彼がクツクツと笑った。



しょ、しょうがないでしょー?!


ひどい、馬鹿にされてる気がする。



「コトコ、そんな顔しないでよ」



よっぽど私が膨れっ面だったのか、困ったように両手で私の頬を包み込んだ彼。