自分の進むべき道を決めかねたまま、私はその店の前に再度立つ。



小雨が降る中バイクを走らせ、ソレイユの前で空を見上げた。



「ケン?分かってくれるよね?二人の為だったら、私頑張るから!」



方向性がズレていた事に気がつかないまま、ぎゅっと拳を握るとその階段を駆け上がった。



「矢口さん、免許ある?」



「コピーでもいいですか?」



浅い知恵で作り上げた、ニセモノの免許証はあっさりと受理され今度は3階の奥へと案内される。



それでもまだ、ここは堕ちかけた穴の浅い所。



周りには希望という光が溢れている。



だから……底辺から光を見上げるなんて事は、とても出来ないんだ。



自力で這い上がる事……気付けば、きっと可能だったのに。



それを知るのは、ずっとずっと堕ちてしまってから。