---闇。





何も見えない、
黒一色だけの空間で




朦朧とした意識の中、私は浮遊感に浸っていた。







上も…下も…



何も分からない。



どの位、そうしていたのかも……。



でも、なんとなく落ちているような気がする。





何も考えられなくて、この不思議な感覚に誘われるように、意識を手放した。












* * *


……ド……
ドド…………ド………



「…う………ん…………?」



遠い意識の中、何か叩くような音が聞こえてきた。



その音に段々意識がはっきりしていき、重たいまぶたを開ける。



ぼんやりしていた視界が、晴れていく。



目の前の光景は----












---鮮やかな緑色が、視界一杯だった。











不意に自分が倒れている事に気づき、顔を上げる。



その先には、若々しい木々が囲むようにそびえ立っていて、柔らかい草が敷き詰めている。




チャプ……



「っ、冷た……?」



遅れて足元に冷たい感触に気づき、少し重い体を気だるげに起こし、後ろに振り向く。




ドドドドドドド……







最初に、勢いよく音を奏でる滝。



滝壺の水面に浸かっている自分の足。



……水面に、浸かって……?





「……!?」



慌てて足を引き抜き、完全に意識が覚醒する。




目の前には、水面に波紋を浮かべ続ける滝。



辺りにはそよそよと揺れる草、若々しい木々。




私、滝を背に倒れてたんだ……。




………いや、そうじゃなくて!!!