新城律樹が遊び人じゃなくなった、という噂はあっという間に広がった。


天と地がひっくり返るだとか、
よくないことが起こる前触れだとか、


言われ放題だった。



「ったく……俺をなんだと思ってんだよ。」



舌打ちする俺の横、大地はこれまた愉快に笑う。



「噂って怖いね。広がるのが早い。」
「たかが女の誘い一回断っただけじゃねえか。」
「それだよ、それ。“たかが”って言えちゃうとこ。今までの律樹なら絶対断らなかったのに。」




俺に恋人が出来た事実も、その相手が景だと言うことも、大地だけは知っている。



「彼の影響力はスゴいね。今度ぜひお近づきに。」
「ダメだ。」
「心狭いぞ。あんま束縛すると嫌われちゃうよ?」




この会話は実は三回目だったりする。



「うるせーな。向こうがいいって言ってんだからいいんだよ。」
「最初だけだって。これだから恋したことない人は」



肩を竦める大地を思い切り睨みつける。




お前には言われたくない、と口を開き掛けたとき、肩を叩かれた。


振り向くと、頬を緩めた景の姿。